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シネマアートン下北沢が休館になった

西條です。
先日、P-kraftの福島さんから連絡があり、
映画館、シネマアートン下北沢、が休館すると言う事を知った。
その理由は、親会社のアートンの不祥事に拠るものらしく、
おおまかに言うと、とばっちり、でいきなり休館が決まったらしい。
劇場には何の落ち度も無く、閉める必要なんか無いのだ。でも閉めることになってしまった。

福島さんは僕らの気持ちを上手く表現してくれている。
僕らは閉館という言葉ではなく、休館という言葉を使うことにした。

金曜日のレイトショー、福居ショウジン監督の『the hiding -潜伏-』が最後の上映作品となった。
前日の木曜日、支配人さんから電話が入った。
その声は、優しいトーンを保ちながらも、いつもと違い、とても疲れていて、何人もの人に電話をしているんだなとわかる。沢山の人に説明をして、言葉を交わす度に複雑な気持ちになってるんだろうと思ったので、僕は少し理由を聞いてから、「明日行きます」と言って電話を切った。
とりあえず、お礼も、お疲れ様の言葉も、なんか違う気がしたのだ。

金曜日、いつものように超満員で劇場に入れない。
満員御礼。なんでこれで休館になるんだろう。
外で待つ人達の間を縫って、劇場を存続させるための署名をしている人達がいる。
知った顔もチラホラいる、事情を聞き、あまりにも唐突であることのみ現実感を持っている。
一週間以内に決まった休館劇。
スタッフも、観客も、その場にいる誰だってなんの実感も持てていない。だから笑顔も辛い顔も、なんだかわからない顔も。

名画と共に、新しい映画を上映してきたシネマアートン下北沢。
僕にとって、映画と向き合うことを教えてくれると共に、思い出してくれる場所でもある。
木のドアに少しきしむ床と、狭い通路に飾られる無数のチラシ、一見古い映画館、でも椅子は座りやすく、ドリンクホルダーも付いている。通路にいると中の観客への配慮を意識して、自然と声が小さくなる。相まって次第に落ち着き、なんだか気持ちが柔らかくなる。時計の針音が似合う空間であり、映画を観るという事を教えてくれる。ここは、映画がとても似合う場所なのだ。

僕がそんな場所と鑑賞以外で最初に接点を持ったのは、
数年前に試験的だったのかどうかわからないが
「映画館貸します」という題目で、日中の空いた時間に、この映画館を貸してくれるというシステムを活用させてもらった時である。
当時、完成した西條組作品「アスリート」の上映場所を探していた僕は、ネットで見つけて活用させてもらった。自主上映をさせてくれるだけなので、いつもの上映と変わらないのだが、映画館で上映させてもらえるというのはとても刺激的であった。お昼12時くらいの上映だったためか、お客さんの入りがイマイチで、出してくれたコーヒーを赤間さんと飲みながら、少し肩を落としたことを覚えている。でもスタッフの方に、他の自主よりお客さんを意識して作ってますから観易いですね、と言われてちょっと嬉しかった。そんな適当な光景からこの劇場との関係は始まる。

数年後、西條組作品「恋鎖」の売り込みを開始。
いろんな場所に行ったが、単館が乱立する場所での売り込みは、館側もグチばかりでなんだか少し嫌気も差していた。それから再編集をし、TAMAで賞を取り、シネマアートン下北沢に持っていった。どうせ無理だろうと思っていたが、支配人さんは作品の狙いや面白さを理解してくれて、上映しましょうと言ってくれた。
それから僕は今までに無い経験をすることとなる。
一般公開に向かって突き進む一喜一憂な生活。
何も知らなかった僕は、2週間のレイトショーのおかげで凄まじく成長することが出来た。劇場にはあらゆる相談に乗ってもらった。話すとキリが無い。
映画というものが、どれほどの人達の思いと力で支えられているのかを、作品が完成した後に教えてもらった。作品と最後まで向き合う姿勢を教えてもらった。そしていつかここの昼間に上映する作品を監督したい、と思うようになっていった。

もともと映画関係者が作った映画館、10年続いた映画館、引けを取らない個性的な作品を上映してきた映画館、今と昔を繋げる映画館、人が成長出来る場所、訪れる人に「ここ、いいね」と言ってもらえる映画館、愛されている映画館、「うちは面白い作品しか上映しない」と言い切る映画館が、消えてしまう。しかも映画とはまったく無関係な理由のせいで。
そんなバカなことがあるか。

なんとかしようと思う。
僕と同じような経験をこれからの人にもしてもらいたいし、ここは他では見られない映画が公開されている、資本に流されまくっている映画界の中で、ある種の安心を担っている。あんなに印象的な劇場がなくなるなんて、世の中からしてもったいない。
なにができるのかわからないけど、気持ちだけは、なんて青臭いことを言ってられない。
存続というか、これを機に発展を狙って僕も一役買います。結構力あります。腕力は無いけど。

そんなわけで、スタッフがどんな展開を期待しているのかまだ聞けてないし、先日休館したばかりなので、これからのことなんだけれど。気持ち優先じゃなくて、本気で狙っていきたいですね。
そしてその暁には、また僕の映画を売り込みに行きます。
とにかく、この事件を切っ掛けに、映画関係者が最も重要視すべきなのは、映画館なんじゃなかろうかと思った。映画監督というものは、映画館で上映する作品を監督する人、なわけで、映画館が無くなれば、必然的に映画監督なんて肩書きも消滅する。映画も無くなる。だから映画館が無くなるということは、シネマアートンに限らず大事件なのだ。

恩を返す時は、必ず来るものです。とりあえず、みんなで頑張ってみます。ていうか、仲間に入れてください。

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2008年06月08日 10:51に投稿されたエントリーのページです。

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